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箱バンジョー - Box banjo (2007)


・楽器の自作に熱中すると、ついつい本格的な仕上げに走りがちですが、ジャズボイラーズ的には勿論、なるべくクオリティを上げずに、粗末な工作にしたいところ。コンセプトというものは非常に大事で、なにごとも方向性を見失ってはいけません。


・というわけで、できました!箱バンジョー。写真では一見きれいに写ってますが、実物は細部にズレやハガレやノコギリ跡があって、いい感じにお粗末な仕上がりです。古いジャズ専用ということで5弦ではなく4弦のテナー(チューニングはCGDA)ですので、日本でこれを弾ける人は100人いなそうですが、弾ける人には猛烈に嬉しい物体と思われます。


・本来ボディの丸い楽器であるはずのバンジョーなのにボディが四角いという時点ですでに、既存の楽器の範疇から外れた未知の領域に踏み込んでおり、制作者やバンドのもつ反社会的な性格を予感させます。幾何学モチーフのデザインは中近東ふう、あるいはまさかのアール・デコふうでもあります。「ハリー・ポッター」みたいなレトロファンタジー系ハリウッド映画から出演依頼が来るといいね!笑


・ボディが四角いと、作るのがラクだし(手鋸で作れた)、しかも四角いから地面にそのまま立てられて、スタンドが要らないのがミソです。底に下駄の歯みたいなかわいい脚が付いてます。なんか明らかに、楽器よりも家具に近づいてます。


・ボディ周面とネックは建築用の木材(ラワン単板)、14mmというぶ厚い板厚もあって、質感はほとんど古本屋の本棚みたいです。皮は透明のOHPフィルムをエポキシ接着剤で接着して熱収縮でテンションをかけており、これは当時あった英国のバンジョー自作サイト「homemadebanjo.org.uk」(現在は消滅)で紹介されていたネタです(同サイトではPETボトルを使用していました)。


・フレットはネックに溝を切った上に銅線を接着したもので、硬化後に棒ヤスリで削って平面を出しました。ブリッジは家の裏の竹、ナットはユザワヤで買ったステンドグラス用?の真鍮線を使いました。フレットマークなんてマスキングテープだよ、ここで象嵌とかに色気を出したら、ジャズボイラーズ的には負けだよね!ペグはヤフオクでエレキギター用のジャンク品を調達(6個で520円)、三重県の出品者さんありがとう。制作記録はおいおいアップします。



・個人的にちょっと気に入っているポイントは、ストラップ(肩掛け帯)をつなぐための金具です。かばん用ショルダーストラップの「ナスカン」という金具をつなぐことが可能な構造になっており、通常のギター用やバンジョー用のストラップは接続できません。深く考えて作ったわけではないけれど、これは「俺もう楽器とかそういうのじゃなくて、かばんとかの仲間で全然いいもんね」ということであり、さらに言えば、楽器方面との互換性を拒絶することによって楽器の持つ権力的序列からの離脱を表明するメッセージ性を持ったパーツとなっています。一体何と戦っているのか。


・この金具の素材は折り畳み傘の骨(ピアノ線?)から採ったもので非常に強じんであり、はげかかった黒メッキの質感と頼りなさげな曲線形状は懐古的かもしれません。そういえば楽器なのにボディに容赦なくネジ止めしていて、このあたりも古本屋の本棚とかに近い扱いです。


・背中側が開いた「オープンバック式」バンジョーは、田中やす師匠がお好きでないと聞いていたので、本機では背中側をベニヤ板でふさぎ、後側で音道を折り返して、四隅の穴から前方に出してみました。背中側に丸いお盆の付いた一般の「レゾネーター式」バンジョーとも違って、いわば「反射式」あるいは「バスレフ式」バンジョーといったところ。


・当初はフレットがビビるし音程も下がりやすくて頼りない物体だったのですが、これを手に取った田中師匠はすかさず、なんとブリッジの下に1円玉を差し込んで弦高を調整!お陰で見違えるほどしっかりした楽器になりました。なるほど、さすが天才バンゼウ奏者!!1円玉は弦高を上げるだけじゃなくて、ブリッジの着座面積の増大によって着座圧力を低減させ、ヘッド(=皮)の局部的な伸びを抑制させるわけですね、師匠!!音質はシガーボックスギター的な箱鳴りが優しい一方、バンジョーらしい華やかさもあり気に入っています。田中師匠には「普通に弾ける」とのコメントも頂いて感激、そういや俺バンジョーとかギターってぜんぜん弾けないし。


・この「箱バンジョー」は、今後のライブで田中師匠に(渋々?)使っていただけそうですが、たぶん1ステージで1曲、箱ベースの曲とかでしか使わないと思われます。制作者としては本当にかわいい楽器なので、お客様には全身を耳にして聴いていただきたいです!


・気を良くして早くも2本目の箱バンジョーを設計中、2本目はある新潟特産品の容器をボディにして作る予定で、すでに問題の容器を調達済み(職場の後輩女子に買ってきてもらった)ですが、詳細はまだ秘密です。だれかにパクられて先に作られると悔しいもんね、まあ誰もやんないか・・。

(2007.11)


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・2020.11追記:2本目の箱バンジョーはなかなか作る気にならず(1本あれば十分なので)、新潟特産品の容器は13年間の待機の末、結局別の楽器になりました。→自作スネア「柿の種モデル」(2020)


・2022.4追記:現在までの変更点:[1]ヘッドはOHPシートがつややかな音質で印象的だったが、薄すぎて伸びやすいため、ミネラルウォーターのPETボトルに張り替えた。[2]「ソフトケース」「折り畳み楽器スタンド」を自作した。[3]弦が切れやすかったため、45度傾斜だったネックヘッドを付け直してストレートにした。[4]フレットマークのマスキングテープは粘ったりはがれたりするためこれをやめて、タミヤカラーの金色でフレットマークを描いた。


・2020.11追記:真似して作って頂いても結構ですが、我々独自の要素を参考にされた場合には、公表や実演の際に「ジャズボイラーズの~」と出典を明示して頂くのが条件です。よろしくお願いします。

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