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自作スネア「柿の種モデル」- Square homemade snare drum with PET bottle head and DIY snare wires (2020)

浪花屋「元祖 柿の種」の有名な四角い缶をリメイクして、スネアドラムを自作しました。自作のヘッド(皮)はペットボトルを切り開いて再利用、自作スナッピー(響き線)は針金を巻いて一から作り、まさかの100%自家製です。コロナ活動休止期間中に完成し、ライブで使い始めました。独自開発のローテク最新技術が満載、目指すは自作簡易スネアの世界標準か??見た目に反して音質は相当リアルであり、自然すぎてお客さんが気づいてくれないのが悩みです。



実質的には木でできています。四角い箱を作り、四隅を丸く削ってジャストサイズとし、これに本物の柿の種の空き缶をかぶせました。



円形の透明なヘッド(皮)は、PETボトルを切り開いてタッカー(工作用ホッチキス)と2液エポキシ接着剤で周囲を固定したもので、ガスコンロの遠火で熱収縮させました(ペットボトル熱収縮ヘッド=特徴1)。使ったPETボトルは2Lミネラルウォーターのもので、タッカーを打つときにはべこべこですが、熱を加えるとすぐに軟化・収縮して、かなりカンカンに張れます。以前に作った箱バンジョーの皮と同じ手口であり(いわゆるsoda bottle banjo head)、海外では子供用の空缶太鼓自作に応用例があるようですが、この方式でスネアドラムを作ったのは世界初かと思います。上下両面張りです。ちなみに市販のドラムヘッドの材質もPET(ポリエチレンテレフタレート)樹脂らしく、そうとすれば市販品に全く遜色ない強度と耐久性が期待できそうです。



・・・はい、ジャズボイラーズ的にはやりすぎ、作り込みすぎですね。柿の種缶をそのまま叩くほうが演奏衝動の表現として熱量が高いのはわかっているのですが、菓子缶の鉄板はあまりに薄いため、耐久性とサウンド面でそれは無理でした。笑


ドラムメーカーさんの部材を一切使わずに作ったということで、そのあたりはご容赦願いたいです。とくに頑張ったのは自作スナッピー(響き線、ハーフタイプ)で、ホームセンターで買った太さ0.45mmのステンレス鋼線を手巻きしてコイル線20本を自作しました(これも先例は見当たらず)。ハーフタイプ(片持ち式)ではコイル線に引張り力が作用しないので、市販品のような鉄片へのロウ付け(ハンダ付け)でなく木片へのエポキシ接着で十分というのも独自の新発見でした(コイル線を接着剤で固定したハーフタイプスナッピー=特徴2。カホン自作界隈にも衝撃の朗報かと)。スネアサイドヘッドへの当て方にも新開発の独自技術を導入しており(フィルムパウチ構造=特徴3)、技術的な目玉は実はこれです。下のほうの動画で紹介しています。



ピッチ調整不可、スナッピー解除不可です。チューニングができないスネアなんてと、意識の高いドラマーの皆様に鼻で笑われそうですが、過去25年も使っていたオイル缶スネア(打面が鉄板、シズルが釘!)と比べますと、自分的にはもう極上品です。鉄板にはないマイルドかつリッチな反発感と、ステンレス線材コイルのドライで繊細なサウンドに、ああ本物のスネアっていいなあ・・・と、軽くうっとりしてしまいます。いえ本物じゃないんですけど。笑


ヘッドの直径が小さい(20cm=約7.9インチ。一般のスネアは14インチ)ため、ちょっとピッチが高くなりすぎたのが難点ですが、使い込めば良い感じに下がってくるかもと期待しています。シェル(胴)が四角い分だけ内容積が稼げており(計算では8.9インチ径スネア相当)、これは低音成分に寄与しているはずです。


シェル(胴)を四角い箱構造としたため、世界の自作愛好家さんの大半が採用する桶状構造のシェル(いわゆるstave snare drum)よりも、はるかに簡単に制作できます。そしてシェル(胴)が多角形であるにもかかわらず、上下面の板の開口部を多角形でなく円形としたため、上下のヘッドの振動には周方向の不均一が生じません。この「シェル形状をヘッド形状から独立させる」との着想(円形開口部つきのバッフル板を結合させた非円形シェル=特徴4)も、(自作バスドラではしばしばありますが)スネアドラムでは類例が無いように思います。


SPF材単板の廃材で作ったシェル(胴)は板厚が15.5mmもあり、また組み立て後に爪楊枝のダボを50本ほど打ち込んでいて剛性が高いので、結構パワフルかつ詰まり気味に鳴ってくれます。太鼓の鳴りにおいては、シェルの真円度よりも、シェルの剛性や材料密度、ヘッドの厚さと張り具合のほうが支配的なのでしょう。そして板厚の割には非常に軽量です(約1.2kg、幼児用マーチングスネアの約半分)。これは、ラグもなし、フープもなし、スローオフ機構もなしと、重たい金属部品が全然ないためです。これだけ軽量ですとワンマンバンド用の背負い型ドラムセットにも良さそうです。


要するに、(柿の種缶の姿をしていますが)板材とPETボトルと針金で作れるまあまあ普通のトラベル用スネアを開発してしまったのではないかと自負しています。スナッピー周りのシンプルな処理を含め、ローテクDIY打楽器では世界最先端でしょう。なお、リムショットのために割り箸(笑)を接着してリムを作りました。一本足のスタンドは竹竿で、スネアとの接続にはまさかの永久磁石を使っています。ブラシプレイも想定して、ヘッドの表面にサンドペーパーをかけて粗面にしてみましたが、これはあまり機能しておらず、うまいコーティングのDIY方法を探索中です。



さらに、当初は「缶の内側に板を貼り込む」との制作手順を想定していましたが、「先に木で箱を作ってしまい、これに底を抜いた缶を上からかぶせる」との方式(ボトムインサーション構造=特徴5)を思いついたためこちらを採用しました。これで制作が飛躍的に容易になり、精度も剛性も向上、メンテナンス時の缶の取り外しも大変スムーズに行えます。地味ですがなかなかの発明かと思います。まあ空き缶利用DIY以外の用途は思いつきませんが。笑


そして!

中身である浪花屋製菓さんの「元祖 柿の種」は大手他社製品とは別次元のおいしさで、職場のおやつに出したところ「これはうまい」「ビールが欲しい笑」と大好評でした。すっきりした辛味と軽快な食感が最高、さすが元祖はレベルが違う!!大きい缶は東京では入手困難のようですが、表参道の新潟物産館で買えました。缶のイラストは細部まで愛情が感じられ、こってりと多色刷りされたブリキの質感は、紙容器が主流になった現在では過剰品質にすら見えます。缶も中身も、手間をかけて入手するに値する逸品だと思います。



缶は大きいタイプの「K15 柿の種進物缶」(写真左、87g×7袋入、約24×24×10cm、税込1620円=当時)を使いました。先に小さいタイプの「K05」缶(写真右、27g×5袋入、約17.3×17.3×6cm、税込540円=当時)で作ってみたところ、音色はなかなか良いのですが、さすがに野外で叩いてみたら音量が小さすぎました。


まとめますと、自作スネア「柿の種モデル」の特徴と思っている点は以下のとおりです。それぞれに込められた技術的な興奮と熱量を感じ取って頂けたら嬉しいです。

・特徴1=ペットボトル熱収縮ヘッド

・特徴2=コイル線をプレートに接着剤で固定したハーフタイプスナッピー

・特徴3=スナッピー(スネアワイヤコイル)保持のためのフィルムパウチ構造

・特徴4=円形開口部つきのバッフル板を結合させた非円形シェル(本件では四角形シェル)

・特徴5=空き缶利用DIYのためのボトムインサーション構造。


最後に・・・「もしかしてこのスネア、柿の種の缶は要らなくね?」などと野暮を言ってはいけません。ただし四角いボディは叩くときに手元の角が少々邪魔なので笑、柿の種缶の外観ににこだわらない方は、もう缶は使わずに、シェルを四角でなく八角形など、手元の角を除いた形で作るのも良いでしょう。既製品のスネアスタンドにも乗りやすいかと思います。


以上、世界中で他の誰もやっていなかった新スタイルの自作スネアドラムでした。真似して作って頂いても結構ですが、我々独自の要素を参考にされた場合には、公表や実演の際に「ジャズボイラーズの~」と出典を明示して頂くのが条件です。よろしくお願いします。

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